この記事のまとめと流れ
材料力学の基礎の基礎が分かります。この記事を読んで材料力学全体をふわっと学んでから参考図書を読んでより詳細を覚えよう!
流れとしては、考え方と公式を記載してから、基礎的な練習問題を解きます。
参考図書
荷重の種類
1.引張・圧縮荷重
2.曲げ荷重
3.せん断応力
4.ねじり荷重(省略)
の4つに分類されます。
それぞれをさらに、時間的に変化するか否かで
・静的荷重(時間で変化しない荷重)
・動的荷重(時間で変化する荷重)
に大別できます。地震荷重のような動的荷重が建築物へ加わる荷重を一律0.2Gに置き換えて評価する場合などもあります。
なお、機械設計で使用する荷重は、金属(延性材料)の弾性限度の範囲(力が加わっても金属が元に戻る範囲)となります。(脆性材料はこの記事では扱いません。)
疲労について
上記の荷重では破壊されない大きさの荷重でも、繰り返して荷重を受けることで疲労破壊されることが多々あります。
疲労と疲労破壊は材料力学において重要な要素なので、今回の記事では扱いませんが、覚えておきましょう。
引張応力(圧縮応力)σt,c
σt,c=P/A・・・(1)
σt,c:引張応力(圧縮応力)、下付き文字のtはtensile:引張の意味、Cはcompress:圧縮の意味)
P:引張荷重(圧縮荷重)
A:応力を評価する位置の断面積
引張荷重(圧縮荷重)による伸びδ
δ=Pl/AE・・・(2)
δ:伸び
P:引張荷重(圧縮荷重)
l:評価する部材の長さ
A:評価する断面積
E:縦弾性係数、ヤング率
曲げ応力
曲げ応力σb
σb=M/Z・・・(3)
σb:曲げ応力、下付き文字のbはbend:曲げの意味
M:モーメント
Z:断面二次係数(≠断面二次モーメント)
断面係数Z一覧
・幅b、高さhの長方形の場合
Z=bh3/12・・・(4)
・中実軸の場合
Z=πd3/32・・・(5)
他の場合については、他サイトや公式集を見ましょう。
職場に1冊あると便利です。
たわみとたわみ角
片持ち梁(先端集中荷重)
ymax=PL3/3EI(梁先端)・・・(6)
θmax=PL2/2EI(梁先端)・・・(7)
ymax:先端のたわみ
θmax:先端のたわみ角
P:荷重
L:部材の長さ
E:縦弾性係数、ヤング率
I:断面係数
片持ち梁(等分布荷重)
ymax=wL4/8EI(梁先端)・・・(8)
θmax=wL3/6EI(梁先端)・・・(9)
ymax:先端のたわみ
θmax:先端のたわみ角
w:等分布荷重
L:部材の長さ
E:縦弾性係数、ヤング率
I:断面係数
両端回転自由の単純支持梁(中央集中荷重)
ymax=PL3/48EI(梁の中央部)・・・(10)
θmax=PL2/16EI(左右の支点)・・・(11)
ymax:先端のたわみ
θmax:先端のたわみ角
P:荷重
L:部材の長さ
E:縦弾性係数、ヤング率
I:断面係数
両端回転自由の単純支持梁(等分布荷重)
ymax=5wL4/384EI(梁の中央部)・・・(12)
θmax=wL3/24EI(左右の支点)・・・(13)
ymax:先端のたわみ
θmax:先端のたわみ角
w:等分布荷重
L:部材の長さ
E:縦弾性係数、ヤング率
I:断面係数
せん断応力
せん断力τとは、引っ張り力や圧縮力がすれ違うように作用する場合に発生する力です。
τ=F/A・・・(14)
τ:せん断応力
F:せん断力
A:せん断力を受ける部材の断面積
練習問題
問題の前提条件
JIS B 8821の計算基準を参考とする。
使用する材料:SS400
基本許容応力
σa=163[N/mm2]・・・(15)
(稼働時のA状態、板厚16[mm]以下で降伏点245[N/mm2]として降伏点を1.5で除した値)
厳密には引張、圧縮とでは許容応力は違うが本筋とは離れるので、今回の計算では基本許容応力をすべての許容応力とする。
また、合成応力σは
σ=√(σb2+3τ2)<σa・・・(16)
とした。
引張応力の練習問題その1
問題
P=200[kgf],L=500[mm]とする。断面は中実円筒直径10[mm]とすると、この部材は圧縮力で破断するか答えよ。
解答
断面積Aは
A=1/4×π×d2=1/4×3.14×102=78.5[mm2]・・・(17)
ここで、荷重P[kg]をP[N]に変換すると
P=200[kgf]=200[kgf]×9.81[kg・m/s2]=1962[N]・・・(18)
(1)式より、引張応力
σt=P/A=1962[N]/78.5[mm2]=25.0[N/mm2]・・・(19)
許容応力(15)式と比較すると
σa=163[N/mm2]>σt=25.0[N/mm2]・・・(20)
となり、以上よりこの部材は破断しない。
・・・では直径10[mm]の鉄の丸棒は何キロまでもつか計算してみましょう。
σa=P/A・・・(21)
→P=A×σa=78.5[mm2]×163[N/mm2]=12,796[N]・・・(22)
→12,796[N]/9.81[kg・m/s2]=1304[kgf]・・・(23)
となり、直径10[mm]のSS400(鉄)で1.3[ton]まで部材はもつことがわかりました。
参考:圧縮応力の練習問題その1(座屈)
問題
P=200[kgf],L=500[mm]とする。断面は中実円筒直径10[mm]とすると、この部材は座屈で破壊するか答えよ。(引張応力の問題の力の向きを逆転させたもの)
解答
引張応力も圧縮応力も応力の向きが違うだけで求め方は同じです。
今回は許容応力も同じとしたので、圧縮応力の許容値としてはもちます。(厳密にいうとJIS B 8821では引張と圧縮で許容応力に違いがあります。
ここで、座屈について考えます。座屈とは、比較的細長い部材がくの字に折れ曲がるように潰れる現象のことです。圧縮を考える際は必ず座屈も考えましょう。
材料力学について、座屈と疲労は必須の検討項目です。忘れずに計算しましょう。
さて、計算を始めましょう。JIS B 8821を参考にして、まず細長比λを求めます。
λ=lk/k・・・(24)
k=√(I/A)・・・(25)
λ:部材の細長比
lk:有効座屈長さ[mm]
k:座屈軸についての最小回転半径[mm]
I:断面二次モーメント[mm4]
(17)より
A=78.5[mm2]・・・(26)
I=πd4/64=π×104[mm4]/64=491[mm4]・・・(27)
(25)式より
k=√(I/A)=√(491[mm4]/78.5[mm2])=2.5[mm]・・・(28)
lk=500[mm]・・・(29)
(24)式より
λ=lk/k=500[mm]/2.5[mm]=200[mm]・・・(30)
ここで許容座屈応力は
σk=σca/ω・・・(31)
σk:許容座屈応力[N/mm2]
σca:許容圧縮応力[N/mm2](本記事では許容は一律163[N/mm2]としたが本来は細かく分かれている。)
ω:座屈係数
表よりλ=100[mm]のとき座屈係数は
ω=6.99・・・(32)
許容応力は163[N/mm2]なので許容座屈応力は(31)式より
σk=σca/ω=163[N/mm2]/6.99=23.3[N/mm2]・・・(33)
となり、許容座屈応力と圧縮応力について、式(33)と式(19)と比較すると
σk=23.3[N/mm2]<<σc=25.0[N/mm2]・・・(34)
となり、座屈破壊してしまうことがわかる。
このように、圧縮については座屈とセットで考えるようにしよう。
曲げ応力の練習問題その1
問題
P=10[kgf],L=150[mm]とする。断面は中実円筒直径10[mm]とすると、この部材は曲げ応力で破断するか答えよ。
解答
モーメントMは
M=P×L=10[kgf]×150[mm]=10[kgf]×9.81[kg・m/s2]×150[mm]
=14,715[N・mm]・・・(35)
(5)式より断面係数Zは
Z=πd3/32=π×10[mm]3/32=98.1[mm3]・・・(36)
(3)式より曲げ応力σbは
σb=M/Z=14,715[N・mm]/98.1[mm3]=150[N/mm2]・・・(37)
許容応力(15)式と比較すると
σa=163[N/mm2]>σb=150[N/mm2]・・・(38)
となり、直径10[mm]、長さ100[mm]のSS400(鉄)で10[kg]の荷重を加えても曲げ応力に対して部材はもつことがわかりました。
せん断応力の練習問題その1
曲げ応力の練習問題その1と同様の条件で、
P=10[kgf],L=150[mm]とする。断面は中実円筒直径10[mm]とすると、この部材は曲げ応力で破断するか答えよ。
解答
断面積Aは
1/4×π×d=1/4×3.14×102=78.5[mm2]・・・・(39)
せん断応力τは(14)式より
τ=F/A=10[kgf]×9.81[kg・m/s2]/78.5[mm2]=1.25[N/mm2]・・・・(40)
許容応力(15)式と比較すると
σa=163[N/mm2]>τ=1.25[N/mm2]・・・(41)
となり、直径10[mm]、長さ100[mm]のSS400(鉄)で10[kg]の荷重を加えてもせん断応力に対して部材はもつことがわかりました。
曲げ応力とせん断応力の合成その1
問題
曲げ応力の練習問題その1で求めた曲げ応力σbと、せん断応力の練習問題その1で求めたせん断応力τから(16)式の合成応力σを求めて評価をせよ。
合成応力σは(16)式から
σ=√(σb2+3τ2)=√(1502+3×1.252)=151[N/mm2]・・・(42)
となり、
許容応力(15)式と比較すると
σa=163[N/mm2]>σ=151[N/mm2]・・・(43)
となり、直径10[mm]、長さ100[mm]のSS400(鉄)で10[kg]の荷重を加えても曲げ応力とせん断応力を合成した応力に対して部材はもつことがわかりました。
まとめ
材料力学の基礎の基礎を使って練習問題を解くところまでやってみました。
材料力学はそんなに得意じゃないので(得意じゃないと困るけど・・・)ミス等ありましたらコメントでもDMでも構いませんのでご連絡いただけたら非常に助かります。
よろしくお願いします!
筆者について
筆者 のびた
3DPなどを使って創作活動をしています。
BASEで販売をしています。
ツイッターはこちら
コメント